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“調理のコツ”が盛りだくさんの実用調理学実習
白衣と白い帽子を身に付けた学生たちが見つめる教室前方の調理台では、同じく白衣と帽子姿の青木友紀子先生が手順などを説明しながら手際よく調理を進めています。「実用調理学実習」の授業では、まず先生がその日の献立を全て作って手本を見せ、その後に学生たちが作ります。
この日の献立は、ベーコンとかぼちゃのクリームソース(パスタ)、イサキのポワレ、カスタードプディング。
先生はカスタードプディングから取り掛かり、「ステンレスのプリンカップもありますが、陶器のほうが火がやわらかく伝わってプリンがなめらかに仕上がるので、きょうは陶器を使います」と説明。学生たちには材料の配合の仕方や加熱方法などが記されたプリントが配布されていて、そこには型について「陶器製がいい」とだけ書かれていますが、先生はなぜ陶器製がいいのか詳しい情報を補足しながら進行していきます。
調理台後ろのホワイトボードの上には先生の手元が映るモニターがあり、学生たちからもコンロにかかる鍋の中や、まな板の上の様子がよく見えます。カラメルソースを作るとき、先生は砂糖を熱した鍋を冷ます際に「鍋の中は、160℃くらいまで温度が上がっています。この中に水を加えると、バチバチはじけて危ないので、鍋の底に水をあてて温度を下げてから残りの水を加えてください」とその理由を説明しながら注意を呼びかけました。単にレシピを教えるだけではなく、豊富な知識と経験を活かし、安全なやり方、効率よく調理する方法を解説。先生の説明はわかりやすく実践的な“調理のコツ”が盛りだくさんで、学生たちは聞きもらさないよう集中し、真剣な表情で重要なポイントをメモしていました。
基礎から学ぼう!調理のメソッド
この授業は1年次に学んだ基本的な調理技術を土台にして、さらに多くの料理の実習を行うものです。包丁が使いこなせるようになり、実用的な家庭料理ができることを目的としているため、包丁の研ぎ方や切り方といった基礎からスタート。日本料理、西洋料理、中国料理や製菓など幅広いジャンルの実習を通して、それぞれの特徴を踏まえた献立の作成や、美しい盛り付け、食材の旬などを学びます。
青木先生はイサキをまな板に乗せると、「今、旬のイサキです。関東や関西では夏の魚といったらスズキだけど、九州では獲れないのであまり見ないですね。代わりにイサキがよく出回っています」と季節だけでなく地域性まで盛り込みながら説明します。
イサキのおろすときには「右利きの人は魚の頭を左に置いてください。おしりのほうから頭に向かって鱗をひきますよ」「魚の頭から背びれにかけてのところにも肉がいっぱいあるから、ここをちゃんと残して頭をおとしてくださいね」と初心者でもわかるよう丁寧に説明しながら実演しました。
これは何のため?…考えるトレーニングで身に付く真の料理力
青木先生が学生に質問する場面もたくさんあります。
イサキのポワレのドレッシングづくりでは、トマトを1センチの角切りにして軽く塩を振り、「15分置いておくとどうなると思いますか?」と学生を指名して質問。「水分が抜ける」と学生が答えると、「正解。余分な水分が抜けてさらに味が中に入るのでおいしくなります」と応じ、理論を説明しながら何のためのひと手間なのかを教えます。さらに、「ニンニクはつぶして入れます。なんでみじん切りじゃだめですか?」と質問し、「つぶしてかたまりで入れれば香りを移した後に取り出せるよね。もしドレッシングにみじん切りを入れたら?生のニンニク食べるはいやでしょ?火を通すときもふわっと香りを残したいときはたたきつぶして、しっかりニンニクの香りをだしたいときはみじん切りにする、その間は薄切りというやり方がいいですよ」とアドバイスします。
質問する狙いは、学生たちの考える力を育てるため。丸暗記ではなく、「なぜこれをやるのか?」と自分で考えるトレーニングをすることで、調理の基本が身に付くからです。調理の理論を学び、自分で考えて実践することで、“真の料理力”を鍛えることができます。
食物栄養学科 講師
青木 友紀子先生
担当科目は「基礎調理学実習」「実用調理学実習」「応用調理学実習」。
奈良県出身。大学は食物栄養学科で学び、卒業後、調理師専門学校に進学。調理師専門学校に14年間勤務した後、病院に勤務。フランス料理とお菓子が得意。
管理栄養士・調理師