KORAN VOICE
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初心者でも大丈夫。見本もあってわかりやすい指導
教室の前方には、斉藤先生が製作したドレスが見本として展示されています。斉藤先生は自分のドレスを見せながら、裏地の合わせ方、裁断の仕方などをわかりやすく説明します。
「ベルトを付けてしまうか、裏地を裁断するか、どうしたらいいですか?」と質問する学生に、斉藤先生は「私はベルトを先に付けてしまって、それから裏地を裁断して縫い付けたよ。そうじゃないとこの生地はほつれるでしょ」と自分の工程を例にしながらアドバイス。
斉藤先生のドレスは、2022年の1月と3月に福岡市の美術館で開かれるファッション総合学科と保育学科の教員による美術作品展(※開催予定)で展示するために製作しているもの。「自分も一緒に縫っていたほうがいろんな工程を見せやすいので、見本づくりを兼ねて作品づくりをしていました。」
現在この授業を履修している学生4人は全員縫製の経験者ですが、例年は1年生の最初の授業以降ミシンを扱ったことがない学生もいます。
学生「スカートはファスナーを付ける前にベルトを付けちゃっていいんですか?」
斉藤先生「ファスナーが先よ」
学生「ウエストは上まで縫うんですか?」
斉藤先生「5ミリ上くらいまで縫えばいいです。でも扱いが雑だとほどけていくので、心配な人はしっかり返し縫いをしてください。ほつれやすいから」
教室では学生と先生がこんな会話をポンポンと交わしていて、作業中にわからないことがあればその場で先生に何でも聞いて、丁寧に教えてもらえます。経験者はもちろん、初心者でも安心して挑戦できる環境です。
お披露目は香蘭祭のファッションショー!根気強く仕上げます
この授業で製作したドレスは、例年、学園祭「香蘭祭」で行われるファッションショーで披露します。7月末までの完成を目指して制作に励みます。
斉藤先生によると、6月下旬の時点で学生たちの進捗状況は、全工程の3~4割程度。先生が「7月末までに作り上げなきゃいけないから。そこまでにできなかったら追再試です。レポートも書かなきゃいけない」と発破をかけると、学生たちは「うわー」と苦笑い。「授業が5限だけの日は朝から来てやろうと思います」と気合を入れ直す人もいました。
学生たちは学校での空き時間を最大限に活用したり、キャリーケースにドレスを入れて自宅に持ち帰って作業しています。斉藤先生は「みんな徹夜してでも仕上げてくるんです。本当にうちの学生は根気強いと思います」と感心していました。
モノづくりの面白さ、それは仕上がったときの達成感
難易度の高い作業やタイトなスケジュールのため、とてもハードな授業のように見えるかもしれませんが、実際に製作している学生たちからは、自分が手掛けるドレスへの情熱、難しいことにチャレンジしているからこそ得られる充実感がひしひしと伝わってきます。
仮縫いの糸を慎重にとる人、スカートの本縫いを仕上げる人、ドレスに合わせるジャケットの裏地のパターンを作る人…。それぞれが世界に一つしかないオリジナルのドレスを最高のものに仕上げようと、今やるべきことに集中して取り組んでいます。
1人の学生は、ドレス製作の面白さをこう話してくれました。「あきらめそうになることもめちゃくちゃあります。失敗することが多くて、ほどき直してまた縫って…とやり直しも多いので。でも作り終わったときの達成感がすごいから、最後まで頑張ろうと思えます」。
ここで学ぶ学生たちは、未来のファッション業界を担うたまごたち。斉藤先生は「どんな服でも安く手に入る時代に、製作を勉強しようという気持ちがうれしいですよね」と頼もしく感じている様子です。それぞれの奮闘が静かな熱気となって、気迫に満ち溢れた教室。「これがモノづくりの力です」。斉藤先生の一言に、この授業の魅力が詰まっています。
ファッション総合学科 准教授
斉藤 朋子先生
担当科目はドレス製作、西洋服装史、アパレルCAD、デジタルパターン。
休みの日など時間があるときは趣味のフルートを演奏している。