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多彩な知識で人間力豊かな保育者を育てる講義
「6月19日は何の日か知っていますか?福岡大空襲があった日です」。6月中旬に行われた「保育者論」の授業は、寺地先生のこの言葉で始まりました。一見、保育とは関係のない話題のようですが、そこには「平和な社会を作る子どもたちを育てていくという意識を持っていてほしい」という学生たちへの先生の願いが込められています。
戦時中に福岡市動物園が一時閉鎖し、ライオンやトラなど大型獣が処分されたこと、戦後、現在の場所に新たに開園したこと…。「福岡市の公立保育所の先生たちは、6月19日になるとこの動物園の話をして平和保育をやっています。福岡で保育をするのであれば知っておいてほしい。みなさんはこれからの平和を担う子どもたちを育てていく職業に就くのです。だから歴史的なことを知ることは大切なことなのです」。
経験豊富な先生に学ぶ、実践的理論
この授業は、幼稚園や保育所などにおける保育者の意義と役割、職務内容、課題について理解し、グループワークやディスカッションを通して保育者としての自分と向き合いながら学びを深めていきます。寺地先生が保育士として12年間勤務した経験をもとに、毎回授業の初めに子どもの理解を深めるための遊びなどを紹介し、講義は現場での事例を盛り込みながら学生たちが保育の様々な場面を身近な課題としてとらえられるように工夫され、実践に基づいた理論を学べる内容です。
この日の講義のテーマは「生涯発達とキャリア形成」。先生は厚生労働省が定めた「保育所保育指針」で挙げられている保育士の専門性を読み上げながら、「みなさんは香蘭で2年間学びますが、保育実践の中でさらに身に付けていくべき専門性がたくさんあります。保育者は生涯発達していく職業です」と説明します。「保育者はスタートした時点から専門家としてふるまうことが求められる職業です。幼稚園に勤める人はいきなり一人で担任するかもしれない。自分で考えながら自分の課題を見つけて自己評価しながら自分で発達していかないといけない、すごく難しい職業です」。保育者としての心構えをこう強調すると、学生たちは一生懸命ノートにメモしていました。
すべては子どものため…学び続ける保育士に
保育者のキャリア形成をめぐっては近年、厚生労働省が定めた保育士のキャリアアップ研修制度がスタートしたことで大きく変化しています。保育士のキャリアアップの仕組みを作り処遇改善を目的とした制度で、寺地先生は「専門家が研修を行うので、新しい情報を得て10年前、20年前の保育からアップデートできます。3年以上勤めた人は分野別リーダーといって、いろいろな分野の研修にも出られます。キャリアアップ研修を受けることで処遇改善の手当ても付くので、今まではなかなか上がらなかった保育士の給与が少しずつ上がってきています」とわかりやすく解説します。
「保育者は入職してからも学び続ける存在であるということが重要です。それと、知識や技術を必ずアップデートしていくことも大事です」(寺地先生)
文部科学省や厚生労働省などのホームページを定期的にチェックし、保育に関する新しい情報を自らつかみ取る力、積極的に研修に行き新しい知識をつかみ取ることの重要性も強く訴えました。「すべては“子どもにとってどうなのか”を常に念頭に置くことが大事です。自分がやりたい保育や大人にとって都合のいい保育ではなく、子どもにとってどうなのかを念頭に置きながら成長していかないといけない職業です。これは私の遺言だと思ってください(笑)。就職してからがスタートということをしっかり頭に入れてほしいなと思います」。
現場での経験も交えながら、未来の保育士たちが目指すべき保育士像を熱く訴えました。
保育学科 講師
寺地 亜衣子先生
福岡県太宰府市出身。休日は家でのんびり過ごしながら、趣味の音楽を聴くことで癒やされている。担当科目は「教育実習」「保育者論」「教育課程総論」