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栄養士というと保育園・幼稚園や病院や老人施設の栄養と調理をする仕事を担当するものと思われています。栄養士は栄養や食育の知識や調理技術を用いて多くに人の健やかな食生活を豊かにすることを行います。
食の専門知識を学んで栄養士免許をもって卒業することで、一般の文科系とは違った食の専門的な知識を使って、すぐに社会に生かすことができます。
■栄養士は、食べ物や人の健康に関する分野ならどこでも大活躍!
調理が好きな人も、製菓・製パンやスイーツが好きな人も、スポーツが好きな人も、美容健康に興味がある人も、食文化や地域の活性化を考える人も、世界の食糧問題を考える人にも。
食品とそれをどうやって活用するか、全ての部分において栄養の知識が得られるのが栄養士です。
これから期待される栄養士が活躍する3つの分野についてご紹介していきましょう。
1.食品メーカー・販売店や流通産業で活躍!
食品メーカーで働く栄養士もいます。商品開発のためには、マーケティングを元にお客様のニーズを把握して、喜ばれる新製品を開発する必要から栄養の知識をもとに、自社製品の特長を知り尽くして販売につなげる役割も重要です。また、製造の現場では、食品品質管理を行う栄養士として、品質管理室に勤務する栄養士もいます。 栄養士のカリキュラムには、品質管理を行う食品衛生学と官能検査を行う実習も含まれておりとても重要な役割を担います。製造ロットごとに細菌検査や異物混入が無いかを調べ安全性を常時チェックする業務や、お客様相談室や広報室などで、レシピを公開して便利に美味しく使ってもらえるような活動を担当する栄養士もいます。短大の栄養士コースではマーケティング論なども学ぶことができます。
近年、食品販売では「栄養成分表示」がさらに詳しい表示で義務付けられるようになりました。原材料などの「食品表示」も年々細かく変わってきました。特定原材料と言われる食品アレルギーについても、表示義務がある食材が増え、今年(2023年)は「くるみ」が新たにアレルギー表示義務食品(特定原材料)に加えられました。このように食の安全基準や表示についても年々変化していて栄養士の専門的な知識が重要となってきています。食品製造販売でも栄養の知識が重要で、食品表示法で間違った表示をした場合、50万円から500万円の罰金が課せられるため、栄養や食の知識がないまま表示ラベルを作成していると大変なことになってきます。そのため専門的な知識を学んでいる栄養士の活躍のニーズはさらに重要になってきています。
食品を開発して製造・販売する食品メーカーや総菜店、製菓製パン店、スーパー、道の駅など様々なフィールドでの栄養士の活躍が必要とされています。
美味しいもの、便利なものだけでなく、安全・安心して食べられるよう、中に何が入っていて、特定原材料のアレルギー表示を正しく行い、食中毒防止の安全対策などを、きちんと消費者に伝える時代になってきました。
また、ここ数年のトレンドのキーワードは、「たん白質(プロテイン)」「完全栄養食」というブームではないでしょうか。最近は、お店をいくつかまわると「高たん白質(プロテイン)食品」「完全栄養食」という言葉でアピールされた食品を色んなところで見る事が出来ると思います。
なぜこのようなキーワードが最近流行っているかというと「日本人の食事摂取基準」という食事基準が厚生労働省から発表されていますが、5年ごとに改定され、現在2020年~2025年の間の基準が示されています。高齢者社会を迎えた日本ですが、2020年版の改定時に高齢者のたん白質の目標量が増やされました。寝たきりにならないで若い世代への介護負担を減らすために高齢者のたん白質の摂取基準が見直され増やされました。厚生労働省のこの動きに反応して、食品メーカーはたん白質をしっかり含んだ美味しく食べられる食品を開発にしのぎを削っています。
栄養士はこのような栄養基準の変更の情報にいち早く対応することができるので、食品メーカーの中でも重宝されます。
栄養士のカリキュラムには、栄養学の知識だけでなく、総合的に食文化や食品流通、食品研究、品質管理、細菌検査や食中毒防止、食品衛生実験を学んでいるため、商品開発やバイヤーや品質管理室で活躍する栄養士もいます。
栄養士は、体に良い健康バランス食の勉強に加え、食文化を広く知るための世界の料理、製菓・製パンを行う調理実習、味噌やジャムなどの食品加工実習、大型の業務用調理機器を使った大量調理の実習など、たくさんの経験と知識を学んで栄養士免許を取得しています。これからは、お菓子を作るだけや料理を作るだけではなく、SDG’sなどを踏まえて、栄養や健康の知識があると有利です。
栄養士は、食の専門家であり、食に関する各方面で活躍するための基本の資格となっていてとても有利です。
2.レストランやスーパー・コンビニ・外食中食分野で活躍!
レストランにも様々なものがあります。例えば、ホテルレストランでの事例を見てみましょう。ホテルのレストランは料理の技術の粋を極めたシェフ・料理人の世界ですが、最近困ったことに人手不足の波が押し寄せています。ホテルレストランでも特に結婚式などお祝いの席を飾るハレ舞台が収益の中心であり、婚礼料理は幸せな新郎新婦を祝福する記念すべきお祝いの料理です。豪華であれば良さそうですが、人出不足はどの業界も同じ。結婚式などでは一度に数百人の料理を提供するのですが、実はここに、栄養士が経験している大量調理の技術が生かされています。十数名程度のディナーならば、シェフとスタッフの目が行き届くので出来立ての料理のデシャップ(Dish-up)もスムースです。スープも注いですぐ提供することが出来て、温かく美味しいスープを食べて頂く事ができて、フルーツをゼリーで固めたジュレソースも冷たく美味しく提供できますし、デザートのアイスクリームやソルベ(シャーベット)も凍ったままの冷たい美味しさですぐに提供できていました。
しかし、一度に数百人の料理を同時提供することは大変難しいことです。配膳に時間がかかり、温かい料理はすべての盛りつけが終わるころには冷めてしまい、アイスやジュレなどの冷たい料理は溶けてしまいます。
そこで、大量調理の経験と知識がある栄養士の発案が生かされます。温かいスープが冷めにくいように、コンソメタイプではなく、トロミが付いたポタージュ系を提案し、アイスもミルクやソルベ(シャーベット)ベースではなく半固形のプディングタイプのもの凍らせてアイスを作ります。さらに、夏場の前菜に使うジュレなども時間がたつと室温で溶けてしまうので、高齢者施設で使うトロミ剤(食物繊維)を使って、ジュレの食感を保ち、時間がたっても室温で溶けないように工夫して応用します。シェフの世界だけだと思っていたレストラン業界にも、他の大量調理分野の技術も応用することが出来て、栄養士の知識や経験がより一層生かすことができるようになってきました。栄養士の学校で習った技術の応用は、このように、人手不足が進む日本でとても役に立つようになってきています。短大では栄養や調理の技術や知識に加え、幅広い食材の知識、フードコーディネート論、フードスペシャリスト論、フードマネジメントのカリキュラムが選択科目で開講されているので、栄養士の資格と共に幅広い食の技術が習得できるように工夫されています。
また、レストランにもいろいろありますが、チェーンレストランはナショナル(全国)チェーンも多く、上場している大きな企業が多いです。それだけに、多くの人に食を通じて健康を提供する役割も大きくなってきています。全国のたくさんのお客さんに喜んでもらえるメニュー開発にもかかわることができます。メニュー開発は同時に社会的な責任も増してきます。特に小さな子供に食物アレルギーがある場合、知らないで提供すると危険な状況になることもあります。そこで、特定原材料という食物アレルギーにも詳しい栄養士が必要とされます。子供向けだけでなく、最近は生活習慣病向けの方向けの減塩食や糖尿病がある方でも使用しやすいように、低糖質食なども普及し始めています。そのような商品の開発も栄養士の活躍領域として広がり始めています。
大きいチェーンは仕入れる食材も大量で日本や世界中から食材を選んで調達するバイヤーとして活躍する場合やフードコーディネートする際も、栄養士の幅広い知識が必要とされます。
レストランや外食というと、最近はスーパーやコンビニも重要な役割を果たすようになってきています。
働き盛り世代が少子高齢化で減り、高齢者の医療・介護負担が増えてきています。そのためこれからの国の方針は長期入院・入所をさせずに、在宅で療養をさせるようになってきています。また、元気な高齢者であっても、一人暮らしの高齢者も増えており、食事を自分で用意するのが困難な状況になりつつあります。そのため、レストランでの外食だけでなく、中食といってデリバリーやテイクアウトとして、外食のメニューや総菜を家庭で利用する中食も増えてきています。共働き家庭でも、子育て家庭などでも食事準備の負担が増えつつあり、ここ数年冷凍食品が大変充実してきています。
主菜・副菜といったおかずまで揃っている弁当形式の冷凍食品もかなり増えてきました。スーパーやコンビニでは、このように、労力と時間をかけられない人が増えつつあるため、調理済みの出来上がりの食品の開発も進めています。
最近のスーパーは、冷凍ショーケーズを倍増してきているのはご存じですか?実は、このような世間の動きを先取りして売場構成を変え、冷凍調理済み食品を大幅に増やしています。
食べ物は地域性もあるため、地場の総菜メーカーとスーパーやコンビニがタイアップして自社ブランドの調理済み食品を増やしつつあります。
しかし、惣菜メーカーやスーパーやコンビニなどの流通企業は、従来の惣菜品の開発は慣れていますが、一般家庭の方向けの健康に良い減塩食や栄養素が充実したバランスがいい食事のメニュー、高齢化社会に向けた自宅介護用のやわらか食やソフト・ムース食などを作るノウハウはまだあまり持っていないのが現状です。今後、栄養士の視点でのメニュー開発が必要とされています。
このページを見られて、本学の食物栄養学科で栄養士のライセンスを取得して卒業する頃に、段々とこのような傾向は強くなってきます。食品流通産業での栄養士の活躍も、これからニーズが出てくる業界です。
3.美容と健康 ~化粧品会社やスポーツジムで活躍~
栄養士の中には、化粧品会社やスポーツジムなどで働く人も出てきました。化粧品会社も、美しさの素には、体の内側から美しくなることが必要といわれるようになってきました。そのため、化粧だけでなく、美容として健康食品や栄養剤の開発にも取り組ムメーカーが出始め、栄養士の知識と経験が必要とされてきています。 化粧品や製薬メーカーでは健康増進のために、最新の栄養学に基づいた栄養配合で、タンパク質、BCAAやビタミン・ミネラルなどが含まれた食品の開発も徐々に進んでいます。これらの栄養補助食品の食べ方や運動との組み合わせなどの個人ごとのオーダーメイドのプランニングについても栄養士が行う専門分野です。
また、スポーツマンのパフォーマンス向上のためにも栄養学の最新の知識が生かされています。単に栄養素を摂るだけでなく、筋力や筋量を増強するためのたんぱく質・アミノ酸の種類や摂るタイミング、また、筋力増強のための負荷のかけ方など、栄養素の体内での使われ方や代謝についても専門的に勉強します。栄養の知識をバックに、スポーツマンのパフォーマンスのアップや健康増進を目指す利用者への助言や食事指導が重要になってきています。最近、全国各地に便利に簡単に利用できるミニスポーツジムが急増中です。そのような利用者に、食事と栄養と体の作り方を総合的に指導できる栄養士の役割は重要性を増してきています。
まとめ
このように、今まで栄養士は、給食施設などで調理をすることが主な就職先・活動分野と思われていました。しかし、最近は、少子高齢化による人手不足対策、食品の開発や健康増進の分野で、より一層栄養士の活躍の場が広がり始めていることを実感して頂けると思います。
中国や韓国など近隣諸国も日本に少し遅れて、高齢化と生活習慣病が増えてきています。いずれ日本と同じような問題が発生してきます。これから栄養士を目指す皆さんには、学んだ栄養の知識が国際的に通用する場も広がってくると思われます。
食と栄養と健康は、誰にでも関係することですので、活躍する場もそれだけ広くて大きいということになります。ぜひとも、食の仕事に進みたい方、ちょっとでも興味がある方が、まず、栄養士のライセンスを取得して、しっかり栄養の基礎を学んでから、料理やスポーツや美容などの広い分野に進むことをお勧めします。